Premiere Proで作る”エモい”色味レシピ集【Lumetriカラー実践】

「Lumetriカラーの場所はわかった。基本補正とかカーブとか、パネルの意味も一応わかった。……で、結局どう動かせば”あの色”になるの?」
Premiere Proのカラーグレーディングって、パネルの使い方を覚えた後に必ずこの壁にぶつかります。数値をいじってみても、なんとなく色が変わるだけで「エモい」とか「シネマティック」とか、狙った雰囲気にたどり着けない。
この記事でわかること
- 「なんとなく」を卒業する、色作りの考え方(イラストレーター視点)
- シネマティック(ティール&オレンジ)の具体的な設定手順
- ふんわりVLOG風・レトロフィルム風・配信向けビビッドの設定手順
- 各レシピの「基本補正→クリエイティブ→カーブ→ビネット」の設定方向
- 肌色くずれ・白飛びを防ぐ、仕上げ前の共通チェック方法
🐔
こっこちゃん
パネルの使い方は覚えたのに、いざ自分の動画を”あの感じ”にしようとすると手が止まる……ってやつだね。今回は「これでこうなる」を丸ごとレシピにしてもらったよ!
この記事は、以前書いたPremiere Proのカラーグレーディング入門|Lumetriカラーの基礎記事の続編です。基礎記事ではLumetriカラーパネルの6つのセクション(基本補正・クリエイティブ・カーブ・カラーホイール・HSLセカンダリ・ビネット)の「使い方」を説明しました。今回はパネルの説明はしません。その代わりに「シネマティック風にしたい」「ふんわりVLOG風にしたい」といった仕上がり別に、各セクションをどう動かせばいいかを具体的なレシピとしてまとめます。基礎がまだの方は先に基礎記事を読んでから戻ってきてください。
レシピの前に:色作りの考え方(イラストレーター視点)

具体的なレシピに入る前に、遠回りに見えて実は一番効くポイントを話させてください。自分は本業がプロのイラストレーターで、キャラクターや背景に色を塗るときにも「色相・彩度・明度のどれを動かすか」を必ず意識して作業します。動画のカラーグレーディングも、実はこれとまったく同じ考え方でできています。
「明るさ」「彩度」「色相」を分けて考える
Lumetriの数値をあれこれ触って迷子になる人の多くは、明るさ(輝度)・彩度(鮮やかさ)・色相(何色か)を同時にいじろうとしています。イラストで陰影をつけるときも、まず明暗(グレースケールで成立するか)を決めてから、色相を乗せていきます。Lumetriでも同じ順番、つまり基本補正で明るさとコントラストを整えてから、カーブやカラーホイールで色相を動かす、という順番を守るだけで迷いがかなり減ります。
補色を意識すると「見たことある画」に寄せられる
色相環で反対側にある色(補色)を組み合わせると、画面に自然な奥行きとメリハリが生まれます。映画のティール&オレンジも、肌色(オレンジ寄り)と背景の影(ブルー・ティール寄り)という補色関係を利用したものです。自分がイラストで人物と背景のコントラストをつけるときも、背景を人物の肌色の補色系に寄せることがよくあります。動画のカラーグレーディングでこれを狙うなら、シャドウ側とハイライト側で反対の色味に振る、という操作に置き換えられます。
「絵の具を足す」ではなく「フィルターをかける」感覚で
イラストで色味の統一感を出すときは、レイヤー全体に薄く色を乗せる「オーバーレイ」的な発想を使います。Lumetriのカーブやカラーホイールも同じで、シャドウ・ミッドトーン・ハイライトのそれぞれに薄く色を乗せていくイメージで動かすと、やりすぎを防げます。一気に強い数値を入れるのではなく、少しずつ動かしてプレビューで確認する。これがどのレシピでも共通する基本姿勢です。
ここからは、この考え方を踏まえた上での具体的な4つのレシピです。それぞれ「基本補正→クリエイティブ→カーブ→ビネット」の順で設定の方向性を紹介します。数値は素材やカメラの特性によって変わるので、あくまで「動かす方向」の目安として捉えてください。
レシピ①:シネマティック(ティール&オレンジ)

映画やドラマでよく見る、肌はオレンジ寄りで背景の影は青緑(ティール)寄りになる王道の色味です。人物を主役として際立たせたいVlogやショートムービーに向いています。
基本補正
まずホワイトバランスをニュートラルに合わせ、露光量を適正に。コントラストはやや強め(+10〜20程度のイメージ)にして画面を締めます。ハイライトを少し下げ、シャドウをわずかに持ち上げると、白飛び・黒つぶれが減って後工程の色乗せがしやすくなります。彩度はこの段階ではまだいじりません。
クリエイティブ
「フェード」を少しだけ加えて黒を持ち上げると、フィルムのような柔らかさが出ます(かけすぎると眠い画になるので少量から)。彩度はやや高め寄りに。ここでティール&オレンジ系のLUTを持っていれば、強さ40〜60%程度で軽く乗せておくと後の作業が楽になりますが、必須ではありません。
カーブ・カラーホイール
ここが一番の要です。カラーホイール(シャドウ・ミッドトーン・ハイライト)で、シャドウのホイールを青緑(ティール)方向にわずかに寄せます。ハイライトのホイールはオレンジ〜黄方向にわずかに寄せます。RGBカーブを使う場合は、Bチャンネルのシャドウ側を持ち上げる(青みが出る=ティール寄り)、ハイライト側を下げる(黄橙が出る=オレンジ寄り)という動かし方でも同様の効果が作れます。肌色が不自然にならないよう、少し動かすたびにプレビューで顔まわりを確認してください。
ビネット
周辺光量を弱め(-1.0〜-2.0程度のイメージ)にかけて、画面の四隅をわずかに暗くします。中央の被写体(人物)に視線が集まりやすくなり、映画らしい落ち着きが出ます。かけすぎるとトンネルのように見えるので控えめが鉄則です。
自分の場合、動画の主役が人物のときは、この後にHSLセカンダリで肌色だけを選択して彩度をわずかに戻す作業を必ず入れます。ティール&オレンジは背景や小物には効果的ですが、肌にまで強くかかると不健康に見えてしまうためです。
レシピ②:ふんわりVLOG風

日常系Vlogやライフスタイル系の動画で人気の、明るく柔らかい色味です。コントラストを弱め、全体を白っぽく持ち上げるのがポイントです。
基本補正
露光量をほんの少しプラス方向に。コントラストは下げ気味にして、全体を柔らかい印象にします。黒レベル(ブラック)を少し持ち上げて「完全な黒」を作らないようにすると、フィルムライクな眠さが出ます。ハイライトは高くしすぎず、白飛びしない範囲でとどめます。
クリエイティブ
「フェード」をこのレシピでは少し強めにかけて、全体をふんわり霞がかった質感に。彩度はやや控えめ(-5〜-10程度のイメージ)にして、色を主張させすぎないようにします。彩度を落としても寂しく見えないよう、次のカーブで暖色を足していきます。
カーブ・カラーホイール
RGBカーブ全体の黒点をやや持ち上げて、コントラストの弱い「眠い」トーンカーブにします。Rチャンネルのハイライトをわずかに持ち上げると、全体がほんのり暖色寄りになり、優しい印象が増します。カラーホイールを使う場合は、ミッドトーンをごくわずかに黄〜オレンジ方向へ。動かしすぎると濁った色になるので、本当に少しだけがポイントです。
ビネット
このレシピではビネットはほぼかけないか、かけてもごく弱く(-0.5程度のイメージ)にとどめます。ふんわり系は「明るく開放的」な印象が命なので、周辺減光で画面を暗くしすぎると雰囲気を壊してしまいます。
自分の場合、この色味を作るときは彩度を落としすぎて「なんか薄い」と感じることがよくあります。そういうときはHSLセカンダリで肌色や食べ物など、見せたい部分の彩度だけをピンポイントで少し戻すと、全体の柔らかさを保ったまま主役はちゃんと魅力的に見せられます。
レシピ③:レトロフィルム風

色あせた質感とわずかな緑〜黄色のかぶりが特徴の、フィルムカメラのような懐かしい色味です。
基本補正
コントラストをやや弱めに設定します。黒レベルを持ち上げて「完全な黒」をなくし、フィルムのようなグレーがかった黒を作ります。白レベルも少し下げて、ハイライトの伸びを抑えると色あせた質感に近づきます。
クリエイティブ
「フェード」を強めにかけて、退色したような質感をしっかり出します。彩度は全体的に落とし気味(-15〜-25程度のイメージ)にして、鮮やかすぎない古びた印象を作ります。粒子(フィルムグレイン系のエフェクトを別途重ねられるなら)を軽く足すとさらに質感が増しますが、Lumetriだけでも十分それらしくなります。
カーブ・カラーホイール
ここがレトロフィルム風の肝です。RGBカーブのGチャンネル(緑)のシャドウ〜ミッドトーンをわずかに持ち上げると、往年のフィルムに特有の緑〜黄色がかったかぶりが出ます。同時にBチャンネルのハイライトを少し下げると、白がクリームがかった色になり一気にそれらしくなります。カラーホイールならシャドウを緑〜黄方向にわずかに寄せる操作でも近い効果が作れます。
ビネット
やや強め(-2.0〜-3.0程度のイメージ)にかけて、古いレンズのような周辺減光を演出します。四隅がしっかり暗くなることで、フィルムカメラらしい枠の狭さが表現できます。
このレシピは「わざと崩す」方向の調整が多いので、基礎記事で紹介したスコープ確認をいつも以上にこまめに行うのがおすすめです。崩しているつもりが、実は素材の露出ミスを誤魔化しているだけ、というケースも多いためです。
レシピ④:配信・ゲーム向けビビッド

VTuberの配信アーカイブ編集やゲーム実況動画向けに、パキッと目を引く鮮やかな色味です。サムネイルでも映える、彩度とコントラストを強めたスタイルです。
基本補正
コントラストをしっかり上げます(+15〜25程度のイメージ)。ハイライトとシャドウのメリハリもつけて、画面全体をキリッと締めます。彩度もこの段階で少し上げておいて構いません(他のレシピと違い、ビビッド系は彩度を序盤から使っていくスタイルです)。
クリエイティブ
彩度をさらに強めに(+15〜25程度のイメージ)。「フェード」はかけません(黒を締めたいレシピなので相性が悪いです)。シャープネスを軽く足すと、配信画面のUIやテロップの輪郭がくっきりして視認性も上がります。
カーブ・カラーホイール
RGBカーブでS字を強めに描き、コントラストをさらに強調します。特定のゲーム画面やアバターの色(青・緑・紫など)を際立たせたい場合は、HSLセカンダリでその色域だけを選択して彩度を追加で持ち上げると効果的です。カラーホイールは全体を大きく色付けするより、コントラストの補助として軽く使う程度にとどめるとバランスが取りやすいです。
ビネット
ビネットはかけないか、かけてもごく弱めに。配信・ゲーム系動画は画面の隅々まで情報として使われることが多い(UIやコメント欄など)ため、周辺を暗くしすぎると見づらくなってしまいます。
自分の場合、VTuber案件の編集を受けるときはこのビビッド系をベースにしつつ、配信者本人の肌色だけはHSLセカンダリで守るようにしています。彩度を全体に強くかけると、顔だけ赤みが強くなりすぎて不自然になりやすいからです。
仕上げの共通チェック:肌色・白飛び・スコープの見方

どのレシピを使った場合でも、書き出し前に必ず確認しておきたいポイントが3つあります。
肌色が不自然になっていないか
カラーグレーディングで一番くずれやすいのが肌色です。目視だけで判断せず、Lumetriスコープの「ベクトルスコープ(YUV)」を表示すると、画面内に斜めに引かれた「スキントーンライン」の近くに肌色の分布があるかを客観的に確認できます。ラインから大きく外れている場合は、HSLセカンダリで肌色域だけ選択して色相・彩度を戻しましょう。
白飛び・黒つぶれをスコープで確認する
「ウィンドウ」→「Lumetriスコープ」から表示できるスコープには、輝度の波形を見る「波形(Waveform)」、RGB各チャンネルを個別に並べて見る「パレード(Parade)」、明暗の分布を見る「ヒストグラム」などがあります。ビビッド系やレトロフィルム風のようにコントラストを強めるレシピでは、波形の上端・下端が振り切れていないか(白飛び・黒つぶれ)を必ずチェックしてください。目だけで見て良さそうでも、スコープで見ると飛んでいることがよくあります。
書き出しで色が変わって見える問題に注意
せっかく丁寧に色を作り込んでも、書き出し設定によっては色が変わって見えることがあります。特に色空間やビットレートの設定次第で、プレビューで見ていた色味と書き出し後の映像で印象が変わってしまうケースは実務でもよくあります。書き出し設定の詳細はPremiere Proの書き出し設定完全解説にまとめているので、色作りが完成したら必ず目を通してから書き出してください。
🐔
こっこちゃん
せっかく作った色が書き出しで台無し……は一番悲しいやつだから、絶対チェックしてね!
まとめ

今回紹介した4つのレシピは、あくまで「方向性」です。素材のカメラ・照明・被写体によって最適な数値は変わるので、まずは今回の方向性通りに軽く動かしてみて、プレビューとスコープを見ながら自分の映像に合わせて微調整してください。
- シネマティック:カラーホイールでシャドウをティール、ハイライトをオレンジへ少しずつ
- ふんわりVLOG風:コントラストを弱め、彩度を落として暖色をわずかに乗せる
- レトロフィルム風:黒を持ち上げてGチャンネルのかぶりを作り、ビネットは強めに
- 配信・ゲーム向けビビッド:コントラストと彩度をしっかり上げ、ビネットはかけない
- どのレシピでも肌色チェックとスコープでの白飛び確認は必須
色作りの基本操作をもう一度確認したい方はPremiere Proのカラーグレーディング入門|Lumetriカラーを、色を作り込んだ後の最終工程はPremiere Proの書き出し設定完全解説を、それぞれ合わせて読んでみてください。
🐔
こっこちゃん
同じ映像でも、色ひとつでこんなに印象変わるんだね!次の動画、どのレシピで攻める?
自分自身、依頼された映像制作の案件では「シネマティックにしてほしい」「配信っぽく明るく」といったざっくりした要望をいただくことがよくあります。そんなときにこの記事のレシピをベースに提案すると、認識合わせがスムーズに進みます。もし自分の動画の色作りに迷ったら、今回のレシピを叩き台にして、まずは1本試してみてください。
